研究概要 |
1. はじめに 光通信やコンパクトディスクではガリウムヒ素(GaAs)を原料としたレーザダイオードが,衛星通信ではGaAs FETがそのキーデバイスとなっている.このように高度情報化社会においてGaAsは極めて重要な素材である.ところで,GaAsウエハを基盤材料とする電子デバイスはウエハに様々な熱処理を施し形成されるが,残留応力が高いウエハは熱処理中にすべりが発生しやすい.すべりが発生したウエハは使用できないため.エピタキシャル成長工程などの熱処理によって発生するすべりと残留応力場の相互関係の解明が求められている. 2. 平成10年度に行ったこと 申請者らは,光弾性実験法に偏光レーザと光弾性変調器(複屈折を電気的に制御できる能動的光学素子(PEM))を採り入れ,高精度かつ高感度な複屈折計測装置を改良し複屈折量にして1nmの高精度を実現した.この装置を利用してLEC法で育成された625μm厚の(100)GaAsウエハの残留応力場の定量評価を試みた.その結果エピタキシャル成長時にすべりを誘起して不良となるウエハとすべりを誘起しないウエハの間の残留応力場の違いを明確にとらえることができた.これは,エピタキシャル成長工程の前にウエハの良不良直接評価が可能となることを示している. 3. 結論 LEC法で育成された半絶縁性(100)GaAsウエハの残留応力分布を定量評価し,エピタキシャル成長工程で発生するすべりとの関係を考察した.得られた結論を以下に示す. 【1】 本報告の複屈折位相差測定装置と測定方法を用いればエピタキシャル成長工程ですべりが発生するウエハをその工程の前に弁別することが可能である. 【2】 合理的な熱処理条件やインゴット育成条件の探索に十分有益なデータを提供できる.
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