研究概要 |
外周刃ブレードを用いたスライシング加工では切断中に生じるブレードのたわみが切断精度に大きな影響を与える。このため,ブレードにたわみを生じさせないような制御が強く望まれている。ブレードのたわみ制御を行うためにはたわみ量をインプロセスで計測できるセンサが必要であるが,研削液の影響を受けないでそれを高精度に計測できるセンサはあまり見当たらない。唯一,渦電流式変位センサは研削液の影響を受け難いが,小さいものでも直径が8mm程度もあるため,フランジからの刃の突き出し量がますます小さくなる最近の高精度スライシング加工には適用できない。本研究では,ブレード両側面に供給する研削液の圧力変化を基にブレードのたわみを計測し,さらにその研削液供給圧力に差を与えることによってブレードのたわみを抑えようとしている。こうすることによってセンサの大きさをコンパクト化できるだけでなく,ブレードのたわみを計測する位置とそれを抑制する位置とが一致し,制御がより容易になると考えられる。今回の実験では,研削液供給ノズル先端とブレード側面の隙間(以下,単に隙間と呼ぶ)の大きさを変化させて研削液供給圧力にどのような変化が生じるかを調べた。具体的には,ブレードにたわみが生じないようにブレードと同径のフランジでブレードの片側の側面を抑え,もう一方の側面に対向させた研削液供給ノズルを,積層型圧電素子を使って駆動して隙間を変化させた。また,研削液供給ポンプからノズルまでの配管径路の一個所にニードルバルブを設け,ニードルバルブ前後での研削液圧力を圧力センサで計測した。実験の結果,ニードルバルブを絞るほど隙間の変化がバルブ前後の圧力差に敏感に現れることがわかった。今回の実験ではブレードに振れがあったために,たわみ計測の分解能は5μm程度でしかなかったが,ブレードに振れがなければ,さらに高い分解能で計測が可能になると考えられる。
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