研究概要 |
気中加工の加工表面性状 気中加工を液中加工の加工表面性状について比較した.加工表面性状については,特に酸素を供給した気中加工について調査を行った.まず,融解再凝固層(白層)の厚さについて調べた.その結果,パルス幅100μs,放電電流20Aの加工条件で得られた白層の厚さは液中加工では15μmに達するが,酸素の場合は1μm以下の厚さしかない.また,機械部品の強度に悪影響を与えるマイクロクラックに関して液中加工は酸素加工に比べて85倍以上の数のクラックが存在することが明らかとなった.マイクロクラックの深さも液中の場合,15μmに達する深いクラックの存在が認められるのに対して酸素加工では1μm以下のクラックしか存在しないことが分かった.さらに,加工表面の残留応力について調べたところ,液中加工の加工表面には400MPa以上の引っ張り残留応力の存在を認められたが,酸素加工のそれは,170MPa程度と低い値である.以上のことから,酸素加工によってえられた加工表面は液中加工の加工表面より高品位であることが分かった.次に,加工表面から深さ方向の硬度分布について比較を行った.その結果,液中加工の加工面は浸炭と急冷により焼きが入った状態であるのに対して,酸素加工の加工表面は母材硬度よりも軟化する傾向があることが分かった.これは,酸化反応による脱炭や熱の影響を受けたためだと考えられる.加工表面の硬度が軟化することは仕上げ加工が容易に行えることになり,酸素加工の放電面は後工程のコスト低減にも効果があると考えられる. 不活性ガスによる気中加工 不活性ガスによる気中加工が実現すれば高純度な加工面が得られると考えられる.そこで,Heガス,Arガスの供給による気中加工を試みた.その結果,放電は安定して生じるが,加工速度が極端に遅いことが分かった.Heガスに関しては全く加工が進行しなかった.しかし,He,Arガスともに得られた加工表面は明らかに母材の表面とは異なっていることが観察された.しかし,不活性ガスを用いた気中加工で得られる加工面性状に関して調査は行っておらず,来年度の課題としたい.
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