研究概要 |
現在,ギヤ部品の精密打抜きにはファインブランキングが多く用いられており,破断面の抑制は実現されている.しかし,この方法ではだれが顕著となり,せん断面が動力伝達を担うギヤ部品では歯先の有効板厚の減少につながり機能上の大きな問題となっている.一方,製品によっては多少のだれが必要な場合もあり,所望のだれ付与の要求もある.原理的に上記問題を解決しうる精密せん断法として対向ダイスせん断法が期待されている.そこで本研究では,対向ダイスせん断法によるだれ量制御について検討を行い,その結果をもとにギヤ部品への適用をはかる.本年度はその予備段階として純アルミニウムを用い,円形輪郭を対象として検討を行った.だれの評価方法として,だれ部の面積ならびに板面方向および板厚方向のだれ開始位置をだれ成分として定義し,だれ成分の変化からだれ面積の変化を推論して各種せん断法によるだれ形成のメカニズムを解明した.これにより,従来,定性的に述べられていた工具クリアランスとだれ量の関係が定量的に裏づけられたほか,だれ量変化へのだれ成分の寄与がせん断法により異なることも明らかになった.だれの制御については,上下工具の切込みのバランスにより両板面のだれ比率が大きく変化することがわかり,逆押え力および突起の突出量がそれを支配する加工パラメータとなることが判明した.また,だれの抑制に関しては,行程初期に生じるだれを小さく押えることが必要で,そのために試料さん幅を小さくして工具の切込みを容易にすることが有効であるという結論を得た.材質の影響として延性の大きく異なる2種類のアルミニウムを用いたが,だれ形成機構および加工条件による諸影響については,両材料とも同様の傾向を示し,同じ解釈により議論できることが示された.次年度は,この結果をもとにギヤ形状への適用をはかる予定である.
|