本研究では、光反射率スペクトルの高精度測定と、それの理論的な解析により、超精密加工によっても表面に残留するわずかな欠陥により生じる表面準位を評価することが大きな目的である。まず、超精密加工の一例として市販のシリコンウエハに施されているポリッシング面を取り上げ、その場所による反射率スペクトルの分布を調べたところ、比較反射率(2点での反射率の差を平均反射率で割った相対的反射率差を表す)が10^<-5>程度の量で存在することを示すことができた。今後の詳しい計測によりスペクトルが明らかにできると考えており、このスペクトルが加工により表面上に残った欠陥によるものかどうかの判断ができると期待している。また、得られるスペクトルを理論的に解釈するための解析手法の開発にも着手した。基礎的な解析手段として、トランスファーマトリクッス法に基づき半無限に続く表面モデルの電子状態を解析した。そのバルク準位を含めたバンド構造の計算の結果は、従来のスラブ型表面モデル(真空層を挟んだ多層薄膜モデル)とほぼ一致する者であった。また、表面準位に関しても表面に局在する波動関数として計算することができた。さらに、量子力学の第一原理に基づく半無限に続く表面モデルの電子状態の解析法を新たに開発しソフトウエア化した。しかし、計算の数値精度が通常のFortran言語の仕様の範囲内では不足していたため、評価可能な解が得られなかった。そのため、高い数値制度の計算が可能なプログラムを新たに作成し、高精度数値計算サブルーチンを完成した。このソフトウェアを用いて半無限に続く表面モデルの電子状態の解析を行えば、表面のエネルギー準位の高精度計算が可能になるものと期待される。
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