研究概要 |
マルチワイヤソーによるスライシングの高精度・高効率化を目的とし,硬脆材料(シリコンおよびソーダガラス等)に対するスライシング実験を行い,スライシング時の切削抵抗・スライシング時間およびスライシング面の評価を行った.本年度の実験の結果,以下のような結論が得られた. ワイヤ走行速度が速いほど加工時間が短く,比加工エネルギも小さくなる傾向にあった.また,スラリー中の砥粒濃度は高い方が効率良くスライシングできるが,ランニングコストを考慮すると重量比で50%程度で十分であることがわかった.さらに,ワイヤに与える張力は,使用ワイヤの引張り強度を考慮した上で,できる限り大きくする方がカーフロスも小さく,加工時間も短くなる傾向にあった. 従来のマルチワイヤソーでは加工部(ワイヤと被削材との間)に常時ワイヤが接触しているため,十分な量のスラリーを供給することが難しい.本年度は目標の一つに掲げていたワーク回転型マルチワイヤソーの実験用試作機を製作し,その基本的性能についても明らかにした.ワーク回転型ワイヤソーでは被削材自身が回転運動を行うため,加工部へ容易に十分な量のスラリーを供給することができる.このため,加工時間の短縮が可能となった.また,スライシング面上を走行するワイヤとスラリーとによって,スライシング面はラッピングを施した場合と同等の効果が得られ,ソーマークの無い良好なスライシング面粗さを得ることができた.さらに,ワイヤの軌道がずれた場合,従来のマルチワイヤソーではウェハに反りを生じてしまうが,ワーク回転型マルチワイヤソーでは加工の進行とともに自動的に反りを修正することができた.
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