研究概要 |
本年度は,スパッタ薄膜を用いて接触部の検出を行なう方法において,スパッタに用いるターゲットの種類やその組み合わせおよびスパッタ薄膜の厚さを変化させた場合の真実接触部の現出性について検討した. 実験は,試料として鋼球とガラス平面を用いてヘルツ接触させた後に,ガラス平面側の薄膜が鋼球側に移着した部分を光学顕微鏡により観察し,さらに外周部付近をAFMで測定することにより薄膜の移着の様子を詳細に観察した. ターゲットの種類と組み合わせ(鋼球/ガラス平面)は,Au/Au,Au/Pt,Pt/Au,Pt/Pt,Pt-Pd/Au,Pt-Pd/Ptの7種類で膜厚10nmでスパッタした.光学顕微鏡による観察ではどの接触こんも鮮明に現れ,その大きさもヘルツの式によって求めた値とほぼ一致する結果が得られた.また,AFMにより外周部の薄膜の様子を観察した結果,水平方向の凹凸が少なく,垂直方向の起伏も少ない最も現出性が良好であったのは,鋼球側Au,ガラス平面側Auと鋼球側Pt,ガラス平面側Auの組み合わせであった. スパッタ薄膜の種類の実験で結果が良好であったAu/AuとPt/Auの組み合わせを用いて,薄膜の厚さを2〜20nmに変化させて押し付け実験を行なった.光学顕微鏡像より膜厚が小さくなっても接触こんは現出された.また,膜厚が薄くなるに従って,接触円半径がヘルツの式による計算値により近づく傾向を示すことから,接触部の現出精度は膜厚が薄くなると高くなり,厚くなると低くなることがわかった.ただし,スパッタ薄膜が2nm以下に薄くなると薄膜が不安定な場合があり,測定装置(AFM)での検出も困難であった.さらに,膜厚が約20nmになると接触の際に移着が不安定になり,薄膜に割れが生じることもあった. これらのことから,今回行なった実験の範囲内では,膜厚は3〜10nmの厚さが接触部の検出に適当であることがわかった.
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