本年度は、摩擦力によるゴム試料表面の変形を可視化し、摩擦面の損傷過程を経時的に測定する手法の確立を目指した。また、その手法を用い、き裂進展時のゴム試料表面のひずみを測定し、パターン摩耗におけるき裂進展の条件を明らかにすることを目的とした。 ゴム試料摩擦面のひずみの可視化のために、ゴム試料表面に微少なマーカを付着させ、このマーカの摩擦による変形を記録した。記録には、科学研究費補助金により購入した高速度CCDカメラ及び画像処理ボードを用い、そのときの時間分解能は5msであった。 その結果、各々のアブレージョンパターンの間に生じるひずみは数10%であることが分かった。また、アブレージョンパターン内側のき裂が生ずると予想される場所では数100%から最大で約700%のひずみを観測した。このときの表面観察より、ゴム表面にき裂伝播させるには約700%のひずみが必要であることが分かった。この値は供試材の破断伸びに相当する。また、き裂進展痕の観察より、その表面は引張りによる破断面に近い様相を示していた。 これらより、本年度の研究からパターン摩耗によって生ずる幅約100μmのき裂進展痕は、低ひずみ(応力)による疲労的破壊ではなく、リッジ根元の破断伸びに達する高いひずみ(応力)が原因であることが推測された。
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