研究概要 |
本研究は、レーザー光を半導体に照射する際に生じる光誘起電流(PIC)を用い、金属-半導体界面に生じる真実接触面の分布および、摩擦の原理的な研究を電子論の観点から行うものである。一般的な単体金属を始め、二相分離系合金に広く見られる表面偏析についても、PIC及び光学解析により、表面状態の変化について議論を行う予定である。本年は、以下の3点について研究をおこなった。それらは、(1)PICによる固体間界面の電流透過率の評価を行い、摩擦係数、その他の物理量との関係について考察を行うこと、(2)様々な金属についての、半導体界面に生じる真実接触面の分布を測定すること、(3)光学解析(分光偏光解析装置)により、2相分離系合金の表面偏析について解析を行うこと、である。以下に、それぞれの研究実績の概要をまとめる。「PICによる固体間界面の電流透過率の評価」荷重の増加に対して比例するPICの積分値およびレーザーの強度による半導体界面の励起電子数の見積もりの比(平均界面電流透過率:γ)から、固体間界面の電流透過率の評価を行った。単位圧力当たりのγの増加率(平均界面電流透過係数:β)は、弾性定数の逆数(1/C_<11>)に、ほぼ等しいことが分かった。そこで、弾性定数と摩擦係数(μ)の関係を調べたところ、μとC_<12>/C_<11>は、比較的良い一致を示した。「真実接触面の分布を測定」 Cu,Ni,Inについて、真実接触面の分布を測定した。真実接触面積は、塑性流動圧力(P_m)に反比例し、分布も、Inについては、中央部に真実接触分布が見られたのに対し、Cu,Niでは、試料周辺部に分布が存在した。「分光偏光解析装置による2相分離系合金の表面偏析の解析」分光偏光解析装置を作製し、Al.Pb系多層膜の表面偏析による光学定数の変化について解析を行った。多層膜よりも単層膜の方が、より偏析の効果が大きいことが分かった。これは、Pb粒子の微細化により、拡散圧が減少したためと考えられた。今後は、2相分離系合金の表面偏析による固体間界面の電流透過率および真実接触面の分布の変化について、研究を進める予定である。
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