研究概要 |
玉軸受の性能向上のためには,軸受内部の玉の実際の運動状態を明らかにすることが不可欠である.この要求に対し,これまでにホール素子と磁化玉を使用する方法で,ラジアル玉軸受の玉運動が明らかにされてきた.本研究ではこの方法を改良してスラスト玉軸受に適用し,理論における玉運動の仮定の妥当性を確認するために,実際の玉の運動を実験的に明らかにしていく.本年度は,ホール素子と磁化玉による玉の運動計測法の精度向上のための予備実験を中心に研究を進めた.概要および成果は次の通りである. 1. 玉軸受の玉が一様に磁化されなかった場合,玉運動解析計算の精度が劣る.そこで玉を一様に磁化することを目的として,コイル鉄心を用いた玉磁化装置を新たに製作した. 2. 形状の異なる3種類の磁化鉄心を製作し,それぞれの鉄心を用いて玉を磁化した. 3. 玉の磁化状態を検定する装置を製作し,装置に組み込んだホール出力を基に各方法で磁化した玉の磁化状態を確認した.その結果,コイル中で鉄心と玉を接触させずに磁化した非接触磁化法による磁化方法が最も優れていることが確認された. 4. 非接触磁化法を用いても,玉の内部組織の状態によっては磁化状態が一様にならない場合があることが確認された.従って,磁化した玉の磁化状態は必ず検定装置で確認して使用する必要があるという知見を得た. 5. 一様に磁化された磁化玉をスラスト玉軸受に組み込み,低回転(100rpm),低荷重(100N)条件下で運転した.このとき磁化玉周りに配置したホール素子からの出力は,従来観察されていた三角波に対し,理想的な余弦波に近かった.このことは,従来より精度の良い測定が可能になったことを示している. 次年度以降は,様々な運転条件下に於ける玉の実際の運動を明らかにしていく.特に玉の自転すべり,スピン現象の理論的・実験的解明を行う.
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