研究概要 |
原子力・化学・航空・宇宙・環境工学機器などで見受けられる固気液三相流の乱流構造の解明のため,数値解析法と画像処理計測法の開発の2方向から研究を遂行した.数値解析では粒子と気泡の並進運動を決定づける厳密な運動方程式を提案し,これをEuler-Lagnrangeモデルとして三相流解析モデルを確立した.このモデルに対して,数値粘性の小さい最新の差分スキーム(CIP.TVD)を応用し,二次元対向型三相流および三次元対向型三相流の分散体誘起型乱流の構造を数値的に予測し,そのデータベースを製作した.この乱流特性値に関するデータ解析を行った結果,三相流時の乱流エネルギースペクトルで検出される逆エネルギーカスケード現象の増幅勾配が,二相流時よりも30%以上小さいことが初めて明らかになった.現在,この理由は,三相流環境における分散体同士の体積率相殺効果と,慣性力の非対称効果の重ね合わせと考えている.一方,実験では,三相流に対する非接触三次元計測を実現するために,新たにカラーグラデーション三次元PTVシステムを構築した.本システムは色相角が連続的に変化する画像を液晶プロジェクターでテストセクションに投影するという照明方式であり,わずか1台の光源と1台のカメラだけで流場の三次元計測が可能である.また従来の2台カメラ式3次元PTVに比べ,速度ベクトル捕獲効率は2倍以上に改善されることが判明した.本システムの包括的性能検証と応用は平成11年度に行う予定である.なお三相流の可視化実験により,当初の推定どおり,気泡と粒子の慣性力,可変形性,界面渦度生成率の差異に依存した非対称な運動形態が確認され,三相流が二相流の重ね合わせで説明できない特有の乱れの構造を有することが示された.以上,平成10年度内に得られた研究成果は,数値流体力学会,日本機械学会,混相流学会にて講演発表され,さらに,平成11年7月にはアメリカ機械学会での講演発表が決定している.
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