研究概要 |
最近注目されている噴霧の数値シミュレーションでは、従来の液滴崩壊の観察結果にもとづいて噴霧内部での液滴の微細化を推定している。しかし、実際の噴霧内部の流動状態は複雑であるから、従来の研究で対象としたように突然一様気流にさられて分裂する液滴ばかりではなく、徐々に気流にさらされる液滴もあればせん断気流の作用を受ける液滴もあろう。シミュレーションの信頼性向上のためには、このような場合の液滴崩壊についても調べておく必要があろう。 このような観点から本研究では、まず、オリフィスを過ぎる気流中に気流と同方向に液滴を滴下する実験手法により、気液間の相対速度が有限の時間で立ち上がる場合の液滴崩壊について調べ、液滴分裂の臨界ウェーバー数は従来の結果と同じだが、分裂形態は相対速度の立ち上がり時間により大きく変化することを具体的に示した。また、気液の流動の数値解析によりその理由を明らかにした。次に、同様の実験手法により相対速度が時間とともに直線的に増加する場合の液滴崩壊について調べ、液滴が分裂する瞬間のウェーバー数は従来の結果よりも大きく、相対速度の増加率が大きくなるほど両者の差が広がることを明らかにした。他方、単純せん断気流中での液滴の分裂についても予備的な実験装置を試作して調べ、主な分裂形態やそれらが観察される条件の範囲を示した。 これらの結果は現行の液滴分裂モデルの適用限界を具体的に示したものであり、噴霧の数値シミュレーションモデル改良のための基礎資料である。なお、現段階では雑誌論文としての発表はないが、以下により研究結果を発表した。 (1)鈴木,気流中での液滴の崩壊過程について,日本機械学会第76期全国大会講演資料集(1998年),VI巻,75-77頁.(2)鈴木ほか,気流の作用により液滴が崩壊に至る過程の数値解析,第7回微粒化シンポジウム講演論文集(1998年),311-314頁.(3)鈴木ほか,せん断気流中における液滴の分裂過程の実験観察,日本機械学会東海支部第48期総会講演会講演論文集(1999年),339-340頁.
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