研究概要 |
本研究では、噴霧の数値シミュレーションに用いられる液滴分裂モデルの開発に不可欠な基礎資料の蓄積を目的として、次の4つの状況下での液滴の崩壊過程について調べた。a)相対速度が有限の時間で立ち上がる場合,b)相対速度が時間とともに増加する場合、c)単純なせん断気流中、d)大きな速度勾配のある気流中。 上記a)については昨年度に実験的に調べたが、液滴の分裂形態が相対速度の立ち上がり時間によって変化する理由ははっきりしなかった。そこで、気流中での液滴の変化過程をCIP法により数値解析して、相対速度の立ち上がり時間により液滴後流の渦の発達状況や背面の変形が大きく異なることなどを示した。このために裂形態が変化したものと考えられる。また、b)についての昨年度の結果を分析して、分裂時のウェーバ数は無次元の相対速度増加率の増加とともに大きくなることを示した。一方、上記c)について、中心面をずらして対向配置した2つの2次元的な気体噴流の間に液滴を滴下する実験手法により調べた。その結果、せん断層の速度勾配が比較的小さい範囲で2個状分裂が、より大きな速度勾配ではせん断型分裂が観察され、後者の発生条件は従来の粘性液流中での気泡崩壊の臨海キャピラリ数よりも遙かに小さいことなどを示した。他方、上記d)についても2次元的気体噴流の外側に液滴を滴下する実験手法により調べてみた結果、単純なせん断気流中に類似の2個状ならびにせん断型の分裂に加えて一様気流中に類似のバッグ状分裂も観察された。これらの分裂形態の発生条件は、各流れ場での分裂条件の簡単な組合せでは記述できないことを示した。 これらの結果は、一様気流中での液滴の崩壊に関する実験資料に基づいて構築された現行の液滴分裂モデルの適用限界を現象論的立場から示したものであって、高確度の分裂モデル開発に有効な基礎資料である。 なお、現段階では雑誌論文はないが以下により成果を公表した。(1)鈴木ほか2名:気流中での液滴の分裂形態と分裂時間、第8回微粒化シンポジウム講演論文集,(1999),pp.103-108,(2)鈴木ほか2名:気流の作用により液滴が崩壊に至る過程の数値解析,第8回微粒化シンポジウム講演論文集,(1999),pp.109-114.(3)鈴木ほか2名:せん断気流中に滴下された単一液滴の崩壊過程,第37回伝熱シンポジウム講演論文集,(2000),No.D311.
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