二次元粘性計算により、サージ点近傍で、これまでに報告されたことのない新たな流体振動が二種類観察された。この二種類の流体振動はいずれも衝撃波に関連するもので、超音速翼列固有の流体自励振動であると言える。 第一の流体振動は、翼列移動方向に、翼列より速く流体振動が伝播するものであった。この流体振動の伝播のメカニズムは以下のようなものである。すなわち、サージ点近傍の高い圧力比のために、翼間衝撃波は不始動となる直前の垂直衝撃波となっている。この翼間垂直衝撃波は不安定で容易に振動し得る。何らかの原因により、この翼間衝撃波が振動を始めると、この振動は衝撃波下流の翼間において流体の圧縮・膨張(即ち振動)を引き起こす。この振動する翼間流体は、翼列後縁から放出される際に、翼列移動方向前側の隣接翼間へと膨張・収縮し、その隣接翼間の流体振動と連動する。したがって、この流体振動は、衝撃波振動と翼間および翼列出口の流体振動とが連成して生じると言える。 第二の流体振動は、翼列移動方向に、翼列より遅く流体振動が伝播するものであった。この流体振動の伝播のメカニズムは以下のようなものである。すなわち、圧力比がさらに高くなると、翼間衝撃波は翼前縁より離脱した不始動衝撃波となる。この不始動衝撃波も不安定で容易に振動し得る。何らかの原因により、不始動衝撃波が振動すると、その翼間から翼列移動方向後ろ側の隣接翼間に流れている不始動濡れ流れにも振動を生じる。この濡れ流れが振動すると、隣接翼間では不始動衝撃波の上流の流体が振動することになる。この流れが振動すると、不始動衝撃波も振動することになり、この振動が隣接翼間への不始動濡れ流れの振動を引き起こす。したがって、この流体振動は、不始動衝撃波振動と不始動濡れ流れ振動が連成して生じると言える。 以上のように、本研究により、超音速翼列に生じる新たな流体振動の可能性が示された。
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