これまで超並列計算機における非圧縮性流れの解法として、連立解法と呼ばれる速度-圧力速成解法に収束加速法である外挿法を組み合わせる手法を提案してきた。従来直交座標系でのみ用いられてきた連立解法の一般曲線座標系への拡張も平成9年度までにほぼ終了している。平成10年度においては、連立解法を実問題に適用するために、精度検証、超並列計算への適合性検討等を行った。 1プロセッサのEWSにおいて厳密解の存在する回転円筒内の流れを連立解法で解き、従来広く用いられているSIMPLE法による解と比較した。その結果、両解法の精度は概ね同程度であったが、格子の歪みが大きい場所でSIMPLE法の解は変数配置に起因する圧力振動を生じて精度を損なうのに対し、連立解法ではそのような振動は見られなかった。 また、並列計算機Hitachi SR2201で2次元および3次元円柱周り流れの非定常計算を行った。1024台のプロセッサを用い、1プロセッサ当たり格子点数を32点と極端に小さくした低粒度の場合でも、2次元計算で48%、3次元計算で31%と非常に高い並列化効率を示した。3次元円柱周り流れでは、円柱後方に3次元的なカルマン渦列の構造が観測され、スパン方向には周期的な渦のペアが4組捉えられた。これは実験とよく一致する。さらにストローハル数、抵抗係数も実験と非常によく一致する結果が得られた。このように連立解法は低粒度においても高い並列化効率を与え、精度的にも実用に耐えうる計算手法であることが示された。 外挿法については、文献調査と基礎的な計算を行い、Sensitivity based methodで用いられている最小化関数を採り入れることにより、メモリコスト削減および加速効果の増大が期待できるとの結論に至った。平成11年度以降に継続して研究を行い、実際の計算により検証をする予定である。
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