高分子溶液の持つ曳糸性を利用し、伸長変形に対する抵抗すなわち伸長粘度の測定を行う方法としてスピンラインレオメータがある。本研究ではこのスピンラインレオメータによる測定が困難な希薄高分子溶液や剛直な高分子流体の伸長粘度特性を明らかにするため複合紡糸を利用し、伸長粘度測定の改善を行うことを目的とする。そのためまず複合紡糸の実現を可能とする実験装置(2種類の試料流体を同心二重円管より流出させ、ノズル下部にて伸長流動を与える構造)を作成した。試料流体として制御用高粘度ニュートン流体には3種類の濃度の水飴水溶液、そして測定対象となる高分子流体については制御用として使用する水飴水溶液にポリアクリルアミド(PAA)を10ppm混入した希薄高分子溶液を使用した。実験は、試料流体の組み合わせ、流量比、フィラメント長さ、巻き取り速度を実験条件として行った。その結果、つぎのことがわかった。(1)試料流体に関し、内管には測定用試料流体をそして外管には伸長流動制御用のニュートン流体を供給することで安定した伸長流動が得られた。また単独の伸長流でよく見られるノズル出口付近のせん断流れによるバラス効果の発生は、複合紡糸では抑制された。(2)内管と外管に供給する試料流体の流量に関し、外管より内管のほうが低い流量で供給しなければいけないことがわかった。またその流量比については本実験装置の場合、2.5が比較的良好な複合紡糸流れであることがわかった。(3)ノズルより流出した流体のフィラメント長さについてはノズル径の約25倍程度にとるべきでそれ以上の長さでは伸長流動を発生させる巻き取りドラムの回転数に依存することが明らかとなった。
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