本研究は、壁面乱流において壁面からの吹出し・吸い込みによる制御を行った場合に壁面摩擦と熱伝達率の減少に比相似な効果が現れることをシミュレーションによって確認することを目的としている。この目的を達成するため、今年度はまず、壁面に向かう流体運動に対しては吹出しを壁面から離れる流体運動に対しては吸い込みを行う制御を伴った2次元チャネル内乱流および温度場の直接シミュレーションコードを作成し、計算を実行した。計算結果は3次元空間の時系列データとしてCD-RあるいはDVD-ramの大容量記憶媒体に記録し、可視化や種々の数値実験が行えるものとしてデータベース化した。このデータベースを利用した数値実験や可視化の結果、現時点までに以下の知見を得た。 1.吹出し・吸い込みによる能動的制御を行うことによって、摩擦抵抗、熱伝達率ともに減少したがこれらの比である2St/Cfは2%ほど上昇し、摩擦抵抗が減少するほどに熱伝達率が減少しないことが確認できた。 2.壁面に流体が向かう運動に対して吹出しを行った領域において2St/Cfが大きく上昇するが、この領域では大きな逆圧力勾配が生じており、この圧力勾配の効果によって速度場と温度場の非相似性が現れた結果であると推測される。 3.しかしながら、吹出し部に隣接して比較的強い吸い込み領域が存在し、ここでは2St/Cfが低下する。これらの互いに隣接する領域には壁面近傍の縦渦構造に向かう運動と壁面から離れる運動が対応していることを可視化によって確認した。
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