研究概要 |
本研究は,メタン・空気予混合ふく射制御火炎(過濃火炎)を対象として,気体しか存在しない発熱反応帯と輝炎の間に存在する非発光領域に焦点を絞り,すす粒子の生成過程を明らかにするものである.本年度は,すす粒子生成と非常に関係が深いとの指摘もあるイオンに注目して研究を行った.具体的には,静電探針(ダブルプローブ)を製作し,火炎内でのイオン濃度・イオン飽和電流の測定を行った.実験で用いたダブルプローブ(複針法)は,(1)ノイズが少なく,(2)火炎から直接(正味の)電流をとらないので火炎に対する撹乱が少ない等の利点を有している.そこで,実験条件は,当量比0.4(希薄火炎),混合気流速3.8cm/s,当量比1.4(過濃火炎),混合気流速2.3cm/sとした.その結果,以下の実験結果が得られた. (1) 希薄火炎では,最高火炎温度とほぼ等しい位置でイオン飽和電流及びイオン濃度は最大となる. (2) 過濃火炎においては,最高火炎温度の下流側においてイオン飽和電流及びイオン濃度が急激に増加する.また,発熱反応帯で生成されるイオン飽和電流・濃度より2〜4倍程大きい値である. これまでの研究結果と合わせて考えると,発熱反応帯で生成されるイオンは一般的にこの領域で生成されるイオンには酸素が関わり合っている. 一方,過濃火炎において最高火炎温度の下流側で生成されるイオンは,当量比,混合気流速,火炎温度等の関数であるとされている. 以上のことより,発熱反応帯近傍でのイオンはすす粒子生成に関与はしないと考えられ,過濃火炎に特有な最高火炎温度下流側でのイオンは,すす粒子の生成に影響があるものと考えられる.
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