研究概要 |
実験的検討では,昨年度に引き続き,窒素,アルゴンガスを作動流体とする場合について,円管内径(5μm〜100μm),長さ,圧力条件,流れのレイノルズ数をパラメータとする圧力測定実験を行ってデータを拡充し,マイクロ円管流路の摩擦特性を調べた.とくに,結果の主たる誤差要因である内径誤差を光学顕微鏡による測定によって1%に抑えた.その結果,摩擦係数の値は5%程度の誤差を有するものの,管径が100μm以下の場合には,層流の発達流から求まる解析値より小さく,流れのレイノルズ数に依らない一定値を示すことが確かめられた.また,流体の圧縮性はマッハ数が極めて小さい場合においても顕著に現れ,これが圧力差により整理できることが明らかになった.次に,エッチングプロセスを用いてシリコンウェハ上に一定の傾きを有する微小な溝を作製し,パイレックスガラスによってボンディングし,摩擦係数の測定を行った.その結果,摩擦特性は,マイクロチューブと同様な結果が得られることが分かった.また,マイクロステップを始めとする凹凸を有する流路形状の品質を左右するエッチングプロセスの最適条件につき検討ができた.また,伝熱実験手法の検討については,必要となる微小薄膜形状熱電対センサーの作製に関して基礎的検討を行うことができた.これらは今後とも研究を進めていく予定である. 数値解析的検討では,現有の非定常二次元マイクロステップ計算コードを基に,本年度は三次元計算コードを開発した.とくに,昨年度の検討や実験的検討から示唆された圧縮性を考慮に入れたコードを開発した.その結果,クヌッセン数が大きくなると摩擦係数の値が低下すること,流れ場に及ぼす側壁の影響は,通常のスケールよりもマイクロスケールの方が小さいことなどが明らかとなった.現在,得られた予測値の詳細を分析中であり,更にパラメータスタディを進めていく予定である.
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