研究概要 |
光照射によって物質が熱的に運動変化する非定常過程の機構が明らかになれば,物質を構成する分子構造,電子構造と光特性との光熱変換の関係を理論づけることができる.従ってフェムト秒レーザーを利用した熱物性計測技術の理論予測やふく射による冷却過程の制御を考えることが可能になる.本研究では,赤外線から可視光までの波長を持つ様々なエネルギー密度の光が物質系に照射される場合に,超短時間(fs,ps,ns)に原子・分子や固体界面にどのような熱運動変化が起こるかについて量子分子動力学解析手法を用いて解析を行い,定性的知見を得ることを目的とする.本年度は以下のようなことを遂行した. 1. 薄膜中原子と照射光相互作用解析の基礎式,プログラムの開発:照射光を電場として捉え,光電場が作用する原子薄膜中の1つの原子が,時間に依存するシュレディンガー方程式中でどのように記述されるかを考察した.その考察に基づき基礎式を解析するための量子分子動力学法による解析プログラムを考えて,作成した. 2. 薄膜中原子における光熱変換機構の解析:照射光の波長と強度によって算出される光電場を照射光パラメータと考えた.この照射光パラメータを赤外線から可視光まで変化させた場合に,薄膜中に存在する原子のエネルギー吸収の時間特性を定性的に比較した.その結果,超短時間における薄膜状態変化や運動エネルギー上昇特性は照射光の波長,強度に大きく依存することが分かった.また定性的には運動エネルギー吸収特性は,照射光の波長が0.1eVを境に変化する知見が得られた.
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