研究概要 |
本研究においては,平均直径10μmの炭素繊維を平均長さ1mmに裁断し,水と混合することで供試流体を作製した.この際,炭素繊維の水中への分散性を考慮し,炭素繊維の質量割合を0.06〜0.2mass%とした.なお,0.2mass%以上の濃度では炭素繊維の沈殿が激しくなり,ポンプでの循環が困難であった.これは,炭素繊維の密度が水に比べて大きいことや,炭素繊維直径が大きいためと考えられる. 炭素繊維混合水の流動・伝熱実験は,内径16mm,長さ2mの直管型試験部により行った.また,炭素繊維混合水の管内平均流速は,0.2〜3.4m/sの範囲に設定した.なお,水の粘性を用いて算出されるRe数は,上記の流速範囲においては3500〜47000である.上述の条件下で炭素繊維混合水の流動抵抗を測定したところ,水のみを管内に流した場合の流動抵抗と数%以内の偏差で一致する結果が得られ,流動抵抗低減効果は観察されなかった.この理由としては,炭素繊維の弾性定数が大きいために微小な力では変形が小さく,乱流エネルギーを十分に吸収出来なかったことや,本実験条件の炭素繊維濃度が小さいことなどが考えられる. また,炭素繊維混合水を用いた場合の熱伝達率は,水とほぼ等しいものであった.これは,本実験のような低濃度条件においては,熱伝導率の増加が小さいためと考えられる. 以上の結果を総合すると,炭素繊維を流動抵抗低減材として利用するには,(1)炭素繊維の水中への分散性を向上させること,(2)炭素繊維濃度を大きくすること,(3)炭素繊維が容易に変形するように適切な寸法・形状を選択すること,が必要と考えられる.
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