本研究においては、平均直径17.7μmのパルプ繊維と水との混合流体を供試流体として用い、内径16mm、長さ2mの平滑直円管内における流動低抗特性と熱伝達特性を実験的に検討した。 管内流動様相を観察した結果、パルプ繊維濃度は管壁近傍で低く、管中央部で高いことが判明した。また、管壁近傍ではパルプ繊維が回転運動を伴いながら流動するのに対し、管中央部ではパルプ繊維が塊となって流動することが分かった。管内速度分布を行った結果、パルプ繊維混合水はビンガム流体に類似な挙動を示すが、その降伏せん断力は平均流速により変化することが分かった。 流動低抗特性としては、パルプ繊維混入による乱流抑制効果が明らかに観察され、その効果はパルプ繊維濃度の増加と共に顕著となるが、パルプ繊維濃度が0.6mass%以上では一定値を示すことが分かった。 熱伝達実験は、等温加熱条件で行った。パルプ繊維混合水流の半径方向の管内温度分布を測定した結果、管壁の極近傍では急激な温度低下が生じるが、これより少し離れると一定温度領域が見られ、さらに離れるとなだらかな温度低下領域となり、管中央部ではほぼ平坦な分布となることが判明した。 また、パルプ繊維混合水の平均熱伝達係数を水のそれと比較すると、層流域ではパルプ繊維の方が大きくなり伝熱促進効果が見られたが、乱流域においては熱伝達が抑制されることが分かった。
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