本年度の研究は主に次の調査、実験から成り、そこから派生する関連分野について、学会報告している。すなわち、アンモニア・水混合媒体の熱物性計算に係わる調査と水ー水蒸気系の実験設備による実験データの収集を主として行った。 アンモニア・水熱物性推算式は、Tillner-Roth等による詳細なレビューをもとに導出、評価されたHelmholtz Free Energyによる状態式表現を基礎とした推算方法が、現状ではもっとも信頼が置けると判断した。この推算方法に則ったWagner等の水(蒸気)データ推算方法がIAPWS95として採用され、これまでの蒸気表に代わり国際標準として受け入れられてもいる。吸収器および凝縮器における熱バランス計算では、VLEにおける熱物性の精度が重要であり、この点これまで本研究で採用してきたIbrahim等の推算結果はTillner-Roth等の結果より劣る。Tillner-Roth等の推算方法を採用したプログラム開発は、さまざまな研究機関および企業から行われることが予想されるが、本研究にとっても急を要するため、現在当研究室にて、プログラム開発を急いでいるところである。また、本研究テーマである吸収器および凝縮器を実験系に組み込むことを想定した、アンモニア・水混合媒体タービンシステム(1999年秋季実験開始予定)におけるシミュレーションから、より効率的なサイクルを提案した。併せて、これに係わる発展形態としての吸収式冷凍サイクルとアンモニア・水混合媒体タービン発電サイクルとのハイブリッド化を意識した研究成果の一部も学会発表している。 一方、水ー蒸気系による実験設備を利用した、直接接触式熱交換器の設計指針を探るための基礎実験データの収集も同時に進めており、現状の実験設備に特定された形態に限定しているが、来年度以降も積極的にデータ収集を図る予定である。
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