研究概要 |
減速機を用いずに低回転数で高トルクを発生するマイクロモータの実現に向けて、摩擦力を利用した新規な電磁マイクロモータの試作と評価を行った。提案するモータの回転子は円柱状の永久磁石であり、その底面には円周方向に斜めに折り曲げた4本の脚を有している。本モータの動作原理は、この脚先端と固定子との間の摩擦力を利用して、電磁力による磁石の振動を回転運動に変換するというものである。したがって、回転子の脚の状態が回転特性を左右する重要な因子であることが予想され,本年度は脚の角度と無負荷回転数との関数を中心に実験と検討を行った。得られた知見は、以下の通りである。 1. 回転数は予想通り脚の取り付け角度に強い依存性を示した。具体的には、脚の角度が90゚近く、例えば85゚程度では一方向の高速回転が得られ、角度が小さくなると周波数に依存した二方向の回転特性に変化した。 2. とくに脚の角度が大きい場合、ある周波数までは回転はほとんど起こらないが、その周辺数を超えると急に回転が起こり同時に回転数が最大になるという特性となった。回転子の振動の振幅を様々な条件で観測した結果、この急激な回転の発生には共振の関与は認められず、脚が回転面から離れる「跳躍」が起こっていることがわかった。 3. 1〜2の結果を自己制動作用と滑りから説明する静的なモデルを提案し、おおよそ説明可能であることがわかった。 上記の無負荷回転数以外にも、来年度に予定していたトルク測定に関する検討を行った。微小トルクを計測できる実験装置を作製するとともに、試作したモータの始動トルクを評価した。その結果、始動トルクは10μNmのオーダと極めて微小であった。そこで、来年度はフェライトコアによる吸引力の増大や回転面の摩擦係数の最大によるトルク増大の可能性について検討する予定である。
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