[目的]本研究では、磁気共鳴画像(MRI)下での新しい外科治療の実現を目指し、MRI情報を用いて高精度かつ安全に動作する穿刺手術支援マニピュレータの開発および制御の研究を行う。減菌・清潔性の確保や強磁場の存在のため、既存のロボット技術を直接用いることは出来ない。また、磁場の歪みが生じるため、位置決め動作を精密に行う際には歪み補正を行う必要がある。本年度は、昨年度までに開発したMRI誘導下穿刺マニピュレータの改良、より安全・確実なMRI内駆動用穿刺機構の開発及び、画像歪補正を含めた制御を重点的に研究した。 [方法・結果]本年度は、昨年度開発したマニピュレータをMRI装置内に導入したことにより生じる歪みの測定およびその補正法を重点的に行った。また、より安全・確実な摩擦駆動によるMRI内駆動用穿刺機構を開発した。摩擦により針が送られるため、一定の負荷を超えた場合にすべりにより針送りが停止する。一方、強磁場下での使用を考慮し、アクチュエータには非磁性超音波モータを用い、本体部材は全て非磁性金属(アルミニウム、非磁性ステンレス、アクリル)を用いている。そのため、マニピュレータの存在自体によるMRI画像の歪の計測を行った。透磁率が異なる材料が撮像範囲に存在した場合に、ある撮像軸方向に画像全体がシフトする現象が観測された。これは、MRI画像撮影原理からも妥当であり、今後はその相関を取ることが必要であると考えられる。 [結論]本研究では、近年増加しつつあるMRI画像下手術の将来を見据え、工学技術によるより高度な治療の礎となるMRI環境下メカトロニクスの開発および画像歪の計測を行った。MRI画像を乱すことなく、また生じる歪が補正可能であり数値制御できることが確認できた。今後はMRI画像取得・位置情報の補正とマニピュレータを連動させた制御システムの構築が課題である。
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