研究概要 |
本研究では,人間の視覚特性を模擬した広角高歪曲レンズを用いた高速画像処理システムを構築することを目的として,実験的検討を行った.画像処理のためのアルゴリズムとしては,広角高歪曲レンズによる投影映像を歪みのない画像に変換した後,通常の画像処理アルゴリズムを用いて画像認識を行う方法も考えられるが,この方法では画像変換という余分なオーバヘッドが生じる.人間の脳内では歪んだ画像をそのまま処理していることを考えれば,歪んだ画像のままで画像処理を行う方が望ましいと考えられる.そこで,画像認識にはニューラルネットワークアルゴリズムを援用し,画像の歪みに関わらず受像画像を直接学習させることにより,画像の特徴を認識することが可能である事を確認した.また,本アルゴリズムでは,受像イメージを次のように注目領域と周辺領域およびその中間領域の三つの領域に分けた.すなわち,注目領域の範囲は,視角にして0゚〜10゚すなわち受像画像の半径の30%以内とする.また,周辺領域は視角にして30゚〜60゚(半径の80%〜100%)とする.実験的検討により,周辺領域における大きな変化であれば低解像度かつ歪んだ画像からでも移動物体などを検出可能であることを確認した.これにより,上記画像処理アルゴリズムを実装した視覚センサシステムをロボットの視覚として用いれば,周辺環境を監視しながら,必要な作業を行うための詳細な画像情報を比較的高速に得ることができるシステムの構築が可能であるものと考えられる.
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