平成10年度は、マニピュレーション過程を評価するための予備段階として、対象物と環境との接触状態に着目したマニピュレーション過程の表現手法を提案した。この手法により、2次元における薄板状対象物の接触状態は、定性的に23種類得られ、これらの間の遷移関係も導出することができた。また、ハンドが接触することにより状態を遷移できる可能性のある箇所を自動検索することにより、定性的な段階から、ある程度マニピュレーション方法を限定することができることを示した。 平成11年度は、定量的にマニピュレーション過程を評価するため、物体の初期状態と目標状態の形状が与えられた場合に、途中の形状の移り変わり(これを本研究では変形経路と呼ぶ)を表現する手法を提案した。また、物体に損傷を与えないようにするためには、変形中の物体のポテンシャルエネルギーの最大値がなるべく小さくなるような変形経路がよいと考え、提案手法を用いて適切な変形経路を導出した。これにより、適切な変形経路を実現するために物体に加えなくてはならない位置や姿勢に関する制約が導かれ、その制約を満たすようにハンドを動かすことにより、マニピュレーション軌道が求められることになる。 平成10年度のマニピュレーション過程の定性的表現手法と平成11年度の変形経路およびマニピュレーション軌道導出手法を組み合わせることにより、与えられた初期状態と目標状態および物体の物性値から、適切なマニピュレーション方法の候補を求めることができると考えられる。ただし、物体の動的変形の利用については、解析から得られた動的変形形状と実測値とが一致せず、今後に課題を残す結果となった。
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