研究概要 |
本年度はマイクロシステムにおけるすべり摩擦力測定方法の確立,および環境変化に伴う摩擦力変化について研究を行った. 本研究室では単結晶シリコンの異方性エッチングにより,二条のV凸形状を有するマイクロスライダ(代表寸法450μm)とガイド(長さ3mm)からなる微小直線運動機構を製作した.本機構において生じるすべり摩擦力を測定する方法として,半導体ひずみゲージから構成される片持ちはりを利用した.これにより数μNの摩擦力測定が可能となった. 次に周囲の環境を変化させたときの,スライダのすべり摩擦特性を調べる実験を行った.実験環境としてはSEMを利用した.実験結果から,大気環境下にあけるスライダの摩擦力の値は約5μN,真空環境下のものは約3μNとなっている.この傾向は100回の繰り返し摩擦力測定においても見られ,その再現性を確認している.この結果,本機構を用いときの結果として,大気環境下における摩擦力は真空環境下のときに比べ約5割程度(1μN〜2μN)増大していることがわかった.SEMを利用したときに,大気環境と真空環境の間で異なるものとして相対湿度がある.標準状態では物体表面上に吸着している水分子は固体接触域で毛管凝縮していると考えられる.数値計算から大気環境下における相対湿度を50%としたときに,表面粗さ勾配の分布に対して,メニスカスにより本機構においては450μN〜0.07μNの吸着力が生じる可能性がある.このことから水分子などによって構成されているメニスカスにより発生する吸着力が摩擦力の増大に影響していた(メニスカス効果)と考えられ,実験によりこの影響を検証した。
|