本研究はマイクロメータサイズの微小部品を正確かつ高トルクで把持できる微小機械(=マイクロマニピュレータ)の開発を目的に研究を行っている。研究ではマイクロマニピュレータのアクチュエータに形状記憶合金を採用することで上記機械の実現を図った。 研究初年度にあたる本年度は形状記憶合金の微細化にともなう諸問題の抽出を行い、微小化した場合の加熱方法の検討を行った。この結果、微小化した場合、形状記憶合金の加熱には直接通電加熱が有効で、ほぼ均一に加熱を行うことが可能であることが実験的に確認できた。また、PWM通電加熱を用いることで、加熱温度を制御することが可能であることが判明し、微細な形状記憶合金アクチュエータを制御する一手法を提案することが出来た。さらに、微小化にともなって形状記憶合金の特性改善が見込まれることが種々の実験より確認でき、マイクロマニピュレータのアクチュエータに形状記憶合金を採用することの有効性が確認された。 また、来年度は研究の完成年であることを意識し、実際に形状記憶合金アクチュエータを使ったマイクロマニピュレータの開発に着手した。マイクロマニピュレータは更なる微小化にも対応できるように、回転対偶となる継ぎ手部分に軸や軸受けなどを用いず、弾性ヒンジ機構を採用する設計を行った。この結果、約20μm〜30μmの物体の把持が可能なマイクロマニピュレータの開発に成功した。現在このマニピュレータの特性や定量的な性能の評価を行っている。 今後、このマニピュレータの更なる改良とその定量的な性能評価を行い、形状記憶合金を使ったマイクロマニピュレータ技術の確立を行っていく予定である。
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