高気圧窒素ガス中において空間電荷存在下の放電進展機構を研究対象とし、(a)レーザ生成空間電荷の存在下での放電開始条件の推定、(b)リーダ放電路周辺部空間電荷の存在下での放電進展速度決定条件の推定、とを数値シミュレーション結果と実測結果との直接比較により実行した。 (a)に関しては、レーザ生成空間電荷(正イオン)の空間ドリフトに起因して、電極先端電解の上昇がシミュレートされた。レーザ誘導放電は自然火花電圧よりも低いという実験結果を、この電極先端電解の上昇現象により定性的に説明できた。定量的にも、4気圧、ギャップ長10cm等の条件下で、実測電圧が-192kVから-155kVへ低下するのに対し-135kV〜-150kV程度に低下するものと推測され、概数として一致した。また、印加電圧の低下に伴って放電時間遅れが増加するという実験結果をも、空間イオンのドリフトの低速化および電極先端電界のピーク時刻の遅れとして、定性的に説明できた。定量的にも、遅れ時間実測値の100μsec程度に対し、計算値は100〜300μsec程度となった。放電現象の確率的に分散の大きい性格を考慮すると、定量的にも十分に有意な相関性を示した結果だと考えられる。 (b)に関しては、リーダ周辺部に空間電荷層の存在を仮定した場合に、リーダ先端部での電界強度の低下がシミュレートされた。高気圧窒素中のリーダ進展速度が極端に低速である理由は、この電界遮蔽効果によるものと推定された。特に1気圧、ギャップ長10cm、進展長4cm、-70kV印加時のリーダ周辺部空間電荷層に付いては、放流電流の実測地から逆算することで、厚みが数mm、電荷密度10^1nCcm^<-3>オーダの状態にあるものと推定された。 以上の結果は、電気学会放電研究会資料ED-99-26、ならびに平成11年度本学学士論文「高気圧窒素中の放電進展過程に関する研究」ににまとめられている。また、第139回電気材料懇談会の講演内容としても公表されている。
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