本研究の目的は、超伝導技術の幅広い産業分野への応用を目指し、スイッチを入れるだけで手軽に操作できるメインテナンスフリーにして強力な磁界を発生しうる冷凍機直接冷却方式超伝導パルスコイルシステムの開発である。開発上の最大の課題は、巻線内部の交流損失による発熱を外部へ導き、これを冷却する巻線構造の開発である。本研究では、振幅1T、周波数1Hzで連続運転可能なパルスコイルを最初の具体的な開発目標として掲げ、これを実現するための要素研究を行う方法を採った。 本年度は、まず、冷却構造の模索として以下のことを行った。 ・絶縁材料ではあるが熱伝導率が高い材料(AIN)をヒートドレインとし、これを通常の銅線とともに巻き込んだ熱伝導特性試験コイルを試作、 ・特性試験コイル内温度分布を測定し、発熱量と温度上昇の関係を明確にして、必要なヒートドレインのボリューム、配置等を検討した。 また、超伝導導体の構造として並列導体を多層にアレンジしたものを採用し、転位方法について熟考してその電流分流特性を実験的に詳細に調べ、均等電流分流を実現しうる転位方法を明らかにした。 以上の結果をもとに、Bi2223超伝導多芯線を素線とした4本並列導体を用いて、40Kにおいて1T、1Hzの連続パルス運転が可能なテストコイルを設計、試作した。その特性については来年度にかけて詳細に調べていく予定である。
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