本研究の目的は、高温超伝導のクエンチ現象を応用して、繰り返し動作可能なオープニングスイッチを開発することである。今年度は、現段階で素線レベルでの性能が高温超伝導体よりも優れている金属系の超伝導材料(母材CuNi、超伝導材料NbTi)を用いて、パルス電流通電時の超伝導線のクエンチ特性を調べ、更に繰り返し動作の可否を実験と理論の両面から検討した。以下に得られた主な結果を記す。 1.巻線長100mの無誘導巻ソレノイド型の超伝導スイッチを作製し、開放動作時の最大抵抗約100Ω、抵抗上昇率10^8Ω/sを達成した。 2.上記のスイッチを誘導エネルギー蓄積型パルスパワー発生装置のオープニングスイッチに使用して、パルスパワー発生実験を行った。その結果、最大出力100kWのパルスパワー発生に成功した。 3.最大周波数1Hzでの繰り返しパルスパワー発生が可能であることを実験により確認した。また、理論計算の結果、更に10Hzまで繰り返し周波数を上げることが可能であることを指摘した。 4.スイッチがクエンチしたときのジュール発熱による液体ヘリウムの沸騰現象を観察し、スイッチの解法動作と周期した気泡発生を確認した。 本研究は、高温超伝導を用いてオープニングスイッチを作製する予定であったが、予備実験の結果から現在の線材性能では十分な性能が得られないことが判明したため、金属系の超伝導材料を用いて研究を実施した。本研究で得られた結果は、現在開発が進められている電力系統用限流器の開発にも役立つものである。
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