磁気力を動力源としてコードレスで動く1mm程度の大きさのロボットが、特に医療応用の立場から期待されている。本研究は、この磁気を利用した微小なアクチュエータ(磁気マイクロアクチュエータ)を実現する上で必要不可欠な薄膜形状でかつ強力な磁石材料を実現することを目的に実験・検討を行った。薄膜磁石の特性向上のためには従来の磁石材料の開発とは全く異なる視点からの開発が必要であり、保磁力や最大エネルギー積よりも、角型比や異方性磁界に着目して開発すべきである。本研究では特に薄膜磁石の異方性制御を行うことによりその性能を向上させることを目標とし、材料としてSmCo系アモルファス材料を選び、検討を行った。その結果、薄膜作成時に印加する磁界により異方性を大幅に制御でき、それにより材料の角型比を高め、異方性磁界を大きくすることが可能であることを明らかにした。得られた角型比は0.95以上、異方性磁界は800kA/m、飽和磁化が1.2Tとなり、従来にない優れた材料の開発に成功した。この薄膜磁石は、1mm程度に加工すると、外部に1kA/m以上の磁界を発生させ得ることが理論計算と実験の両面から実証され、当初予定していたアクチュエータ用磁石としてのみならず、マイクロ磁気デバイスに局所磁界を印加するための微小素子としても極めて有効であることを明らかにした。加えて、様々な形状のマイクロアクチュエータに適用することを目的として、ポリイミドなどの柔軟基板上への成膜を検討し、基礎検討において行ってきたシリコン基板やガラス基板上に成膜したものと同等の特性を実現し得ることを明確にした。これらの成果により薄膜磁石材料の様々なデバイスヘの適用範囲を大きく広げる結果となった。 これらの成果は電気学会マグネティックス研究会(平成10年12月仙台)、電気学会全国大会(平成11年3月山口)、INTERMAG国際会議(平成11年5月韓国)で発表するとともに、原著論文にまとめ、公表した。
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