イオン照射による磁束量子動力学法の実験的検証

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10750222
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 出町 和之 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (00292764)
• キーワード: 高温超電導体 / 磁束量子動力学 / ピンニングセンダ / イオン照射 / 臨界電流密度

研究概要

高温超電導体に高速中性子や重イオンを照射することによる照射欠陥が新たなピンニンクセンタとなることは良く知られており、特に重イオン照射による円柱状ピンニングセンタは、電子顕微鏡などを用いた観察によりそのサイズ・角度・分布などの情報を把握するのが比較的容易である。またそのピンニング力は、一般に点欠陥などの他のピンニングセンタによるピンニング力を無視できるほど充分に大きい。以上のことから、重イオン照射を施した超電導体のピンニングセンタを観察してそのデータを磁束量子動力学シミュレーションにおけるインプットデータとし、数値解析結果を臨界電流密度Jcなどの測定結果と比較検討することは、磁束量子動力学法の定量的確立を実現する上で非常に有効であると考えられる。
そこで本年度としては、まず、磁束量子動力学シミュレーションコードの高速化を目的とし、セル化に基づく本コードの改良を行なった。これによりCPU時間を約1/10と大幅に短くすることができた。次に改良後の法を用い、照射ピンニングセンタのサイズ・角度・分布をパラメータとしたシミュレーションを実施し、照射ピンと高温超電導体の諸特性との相関関係を調べた。この結果、ピンニングセンタの配置を三角格子状にした場合の臨界電流密度Jcは、ピンニングセンタ配置をランダム状にした場合に比べて2〜4倍程度増加するという、実験事実として知られているピーク効果に一致する結果を得ることができた。

研究成果

• [文献書誌] Kazuyuki Demachi and Kenzo Miya: "Development of 3-Dimensional Simulation Code for Fluxoid Dynamics of Type II Superconductor" IEEE Transactions on Magnetics. 34・5. 3218-3221 (1998)
• [文献書誌] Kenzo Miya,Kazuyuki Demachi et al.: "Fluxoid dynamics methods for electromagnetic phenomena of superconductors" COMPEL. 17・5/6. 541-566 (1998)
• [文献書誌] Kentaro Takase Kazuyuki Demachi et al.: "Numerical Simulation of Fluxoid Dynamics in Low Tc and High Tc superconductors" Cryogenics. 38. 263-266 (1998)
• [文献書誌] Kazuyuki Demachi et al.: "Fluxoid Dynamics Method and its Application" Proc.of 5th Japan-Hungarian Joint Semin.on Appl.Electromagn.in Mater.and Comput.Tech.(to be published).
• [文献書誌] Kazuyuki Demachi et al.: "Numerical Simulation of the Fluxoid Dynamics in Bi2212 Single Crystal" Proc.of 8th Int.IGTE Symp.on Num.Field calc Electr.Eng.(to be published).
• [文献書誌] Kazuyuki Demachi et al.: "Mesoscopic Simulation of Electromagnetic Phenomena in BSCCO Single Crystal under AC Magnetic Field" Proc.of Japan-Central Europe Joint Workshop on Modeling and Simul.of Non-linear Eng.Syst.and Related Phenom.149-152