研究概要 |
波長1.3μm帯面発光レーザ実現のため,有機金属気相成長(MOCVD)法によるGaInNAs/GaAs量子井戸の成長技術を確立し,長波長帯面発光レーザの活性層に適用することを目指している. 本研究では,MOCVD法にジメチルヒドラジン(DMHy)および有機砒素原料(TBAs)を用いることにより低温での成長を可能とし,窒素の脱理を防ぐことを特徴としている.本年度は,高品質なGaInNAs量子井戸の形成を行なうために,次の4点について研究を行なった.1).DMHyおよびTBAsを用いたMOCVDによるGaInNAs成長の窒素導入特性を調査し,成長温度,V/III比,成長速度に窒素組成が大きく依存することを明らかにした,2).MOCVD法における低効率な窒素導入特性に対応するため,GaNAs/GaInAs短周期超格子構造を提業し,高窒素濃度が実現できることを明らかにした.3).GaInNAs半導体混晶の熱力学的安定性の理論的検討を行ない,従米,不安定とされてきたこの材料系が,GaAs基板上における歪の影響で安定イしできることを理論的に明らかにした.4).GaInAs高歪量子井戸の成長技術の確立と長波長化を行った.本検討により,歪量子井戸の臨界膜厚が,マシューらの理論ではなく,ピープルらの理論に近いことを示した.また,GaInAsの組成,膜厚を選択することで,波長1.2μmまでのレーザが窒素を導入せずに実現可能であることを示し,より長波長のレーザをわずかな窒素組成で実現できる可能性を開いた.これは,窒素導入の低効率への対処だけでなく,高窒素量にするほど光学特性が劣化することにも対処できる結果であり,高品質なl.3μm帯GaInNAs実現のための重要な技術と考えている. 本年度の本研究により,GaInAs長波長帯面発光レーザ実現の基礎を築いた.
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