酸素のインターカレーションによる大気中不安定性は、フラーレン(C_<60>、C_<70>)の電子デバイス等への応用上、重要な問題である。そこで本研究では、酸素がインターカレートされるC_<60>およびC_<70>固体中の隙間にNe等の希ガスを詰めることで、酸素のインター力レーションを防ぎ、C_<60>およびC_<70>の大気中安定化を目的としている。また、C_<60>およびC_<70>固体の基礎物性における酸素およびNe等の希ガスのインター力レーションによる影響についても調べることを目的としている。以下に本年度得られた結果について述べる。 (1) ガス放出スペクトルを用いて、C_<60>固体を100℃、大気圧のNe中に100℃で保持することにより、Neがインターカレートすることを確認した。 (2) 酸素の場合と同様に、Neのインターカレーションにより、C_<60>固体の暗電気伝導度は録少することが分かった。また、真空中200℃アニールにより暗電気伝導度は回復することも分かった。 (3) 酸素の場合と異なり、Neがインターカレートしても、C_<60>固体の電子スピン密度は変化しないことが分かった。 (4) (2)および(3)の結果より、Neのインターカレーションにより格子が広がるため、電子スピン密度の増加はなく、電気伝導度が増加したものと考えられた。 (5) ガス放出スペクトル測定よりC_<70>においても酸素がインターカレートし、これにより電気伝導等の基礎物性が変化することがわかった。 今後NeをインターカレートさせたC_<60>の大気中安定性を調べる。この結果を基に希ガス以外の物質のインターカレーションについても検討し、C_<60>の大気中安定化を試みる。また、C_<70>についても大気中安定化を試みる。
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