正在輸送材料のトリフェニルジアミン誘導体(TPD)と発光材料のアルミキノリノール錯体(Alq3)を基本的な試料構造として放射線(コバルト60)照射の効果を検討した。ITO基板上にTPDを50nm堆積させ、基板を真空パックした後コバルト60を一定時間照射し、Alq3を蒸着し、デバイス化する。TPDの構造解析のために、赤外吸収スペクトルを測定するので、このためにKBr上にTPDを堆積させた。凝集化の観察は光学顕微鏡によって行った。電界発光特性は輝度-電流-電圧を同時に測定した。 1) コバルト60の照射により、TPDの凝集化が緩やかになった。 2) TPDの化学的な変化は赤外吸収スペクトルからは確認できず、有機溶剤に可溶なことから当初期待した高分子化は生じていないものと考えられる。 3) 電界発光特性比較では放射線照射試料は大気中に放置される時間が、現状では通常作成されるデバイスよりも長いので、見かけ上特性は低下する。 4)コバルト照射による最大の問題点はITO基板のガラスが放射線照射により着色することである。これを改善するためには有機-ITO界面で放射線が全反射するように照射方法を工夫する必要がある。
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