研究概要 |
まず、現有の高誘電率材料(Ba,Sr)TiO_3成膜のための有機金属化学気相堆積(MOCVD)装置で問題となっていた溶液原料の気化供給の安定化・高精度化を目標に、新たに購入した精密温度調節装置とプロセス温度制御用コンピューターを用いて、プロセス中の温度をモニターかつ制御できるシステムを構築した。これにより、気化器からチャンバーまでの間の輸送管内で供給の妨げとなっていた固形物の生成を抑制し有機金属錯体原料を安定に供給することが可能になった。 次に、(Ba,Sr),TiO_3薄膜のMOCVDプロセスのインプロセスでの制御を可能にするために、気相での原料の分解や前駆体の生成の反応過程をその場で診断できる分光計測法としてマイクロ波吸収分光法の適用と微小放電発光分光法の開発に取り組んだ。マイクロ波吸収分光法により、(Ba,Sr)TiO_3薄膜のプリカーサーであると予測した二原子分子BaO,SrO,TiOの検出を試みたが、ラジカル密度が低いため、現有システムでは検出には至らなかった。そこで、周波数変調検出法を新たに適用し、テスト実験としてCHF_3の回転スペクトルの測定を行い、低密度条件下で量子数Kによる分裂を観測した。 マイクロ波吸収分光システムの改良と並行して、感度の面ではプロセスモニターへの適用がより容易な分析法である従来の発光分光法を、微小放電発光分光法に昇華させ適用した。微小放電発光分光法とは、チャンバー内に挿入したセンサーヘッド内で生成した微小な放電からの発光スペクトルを検出する方法である。この手法により、有機金属錯体原料の熱分解反応の進行度を知るための指針となるBa,Srの中性種およびイオン種の発光強度の基板温度依存性を測定し、作成した薄膜の成膜速度・元素組成・結晶性などの膜特性との間に相関があることを見出した。
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