研究概要 |
本年度は、薄膜ナノ結晶シリコン(nc-Si)に関する研究に重点に置き、研究データの積み上げを図った。作製方法は、大面積化に有利なプラズマCVD法を用い、これを陽極化成法により後処理を行い赤色発光を得た。製膜ならびに化成条件をパラメータに材料を作製し、以下の評価を行った。 構造評価法としては、電界放射型高分解能走査型顕微鏡により、表面ならびに断面観察を行い、モフォロジーを確認した。また、顕微ラマン散乱測定で得られた、ラマン散乱スペクトルの解析により、平均結晶粒径は、いずれの作製条件においても4nm未満であり、電子顕微鏡観察で得たミクロスコピックな観測結果と整合性があることを確認した。さらに、x線光電子分光法により、nc-Siの表面近傍におけるサブオキサイド形成に関する知見を得た。 さらに、電界変調分光法による微分反射スペクトルを測定を行い、nc-Siの電子構造に関する知見を得た。電界変調分光法は、電界による吸収係数の変化分を測定するため、構造変化による電子構造変化を鋭く検知し、半導体の光学遷移解析に有効であることがよく知られているが、本研究で初めて、nc-Siの電界変調信号を観測し、nc-Siにおいても電界変調分光法が有効であることを確認した。これら測定結果より、nc-Siは、1.2〜1.4eV,2.2eV,3.1〜3.4eVと複数の光学遷移帯端を有することを確認し、このうち、1.2〜1.4eV,2.2eVの2つの遷移帯が、フォトルミネッセンス(PL)スペクトルやエレクトロルミネッセンススペクトルのピークエネルギーと対応することが示唆される結果を得た。また、平均結晶粒径の減少に対応して、1.2〜1.-4eVバンドの遷移エネルギーの増加、ならびに電界変調信号強度の増加が観測された。これは、結晶粒径の減少による量子サイズ効果によるバンドギャップの増加ならびに遷移の性質が間接から直接遷移的になっていることを反映しているものと推察している。
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