研究概要 |
これまで、10nmの膜厚で破壊絶縁電界10MV/cmの高品質シリコン系絶縁膜の作成に低温下で成功している。この高い絶縁特性は、シリコン基板から2〜3nmまでの範囲に、プラズマプレ酸化をおこなうことにより達成できていると思われる。プラズマプレ酸化を行っていない膜の絶縁破壊特性は、酸化を行ったものに比べて大きく劣っていた。平成10年度はこの酸化の効果について膜構造の面から詳細な研究を行った。 成膜は既存のECRスパッター成膜装置を用いて行った。成膜時のプラズマパラメータは、破壊絶縁電界10MV/cmが得られた際と同じとした。成膜は、30,50,70,100Åの膜厚を持ったシリコン酸化膜について行った。それぞれの膜厚の膜は、比較のためプラズマ酸化したものとしていないもの2種類を用意した。 それぞれの膜の構造評価は、エッチングレート、角度分解X線光電子分光法(Angle-resolved XPS)、全反射吸収赤外分光法(ATR-IR)により行った。 膜厚方向でのエッチングレートの測定は、プラズマ酸化した膜の方がシリコンリッチな遷移領域が短かく、緻密であることを示した。さらに、角度分解X線光電子分光測定は、シリコン基板から2.5-3nmの領域の膜の組成は、プラズマ酸化した膜はほぼ酸化膜の化学量論比を満たしたものであることを示した。また、プラズマ酸化を行っていない膜はその化学量論比が大きくそれからずれていることも示した。 以上、膜の深さ方向での組成および緻密性を統合的に考えることにより、破壊絶縁電界10MV/cmを持った膜厚10nmのシリコン酸化膜の評価を行った。今後、全反射吸収赤外分光法(ATR-IR)測定により、遷移領域の膜の結合状態を明らかにする予定である。
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