研究概要 |
スプリット型超伝導コイルによる、0,1,2,5T印加磁場の下に置かれた、アルミ安定化超伝導線試料に、5000,8000,10000Aを通電し、試料表面に貼り付けたフィルムヒーターを焚き、クエンチに至るか否かで、各条件での超伝導安定性マージンを測定した。また、クエンチが発生した場合、その常伝導領域の伝播を、電圧タップや、ホール素子を用いて測定し、その伝播特性を解析した。また微少な温度計を試料表面に貼り付け常伝導領域拡大に伴う、導体内の温度分布の変化を実測した。 常伝導領域が伝播してくると、まず電流が超伝導線からその周囲の安定化材に転流し、次第に安定化材断面全体に分布するため、測定電圧はいったん急峻に立ち上がった後、やや低下する。ついで温度が上昇して安定化材の抵抗率が増加するため、導体の電圧は増大していく。このようなアルミ安定化超伝導線特有の常伝導伝播時電圧波形を測定することができた。一方導体温度は、断面方向にほとんど均一で、常伝導領域伝播とともに一意的に上昇していった。このことは電流の再分配速度より導体内の温度伝播速度が遥かに速いことで理解される。 試験を通じて、温度伝播速度が速いので超伝導安定性マージンは導体断面全体の比熱に支配され、安定化在中への電流の再分布は、ほとんど影響がないことがわかった。 今後は、同体表面に貼り付けたフィルムヒーターによる加熱ではなく、超伝導部に直接カーボンペーストを取り付け、電流の超伝導線からアルミ安定化材への再分布の工程をより明瞭に測定できるよう工夫していく予定である。
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