(1) ポリマー導波路と液晶の複合集積 ポリマーを用いた有機光導波路は一般的な石英系導波路と比べて作製が容易である。本年度はこのポリマー導波路中に液晶回転波長板機能部を集積化する技術の開発を行なった。具体的には、導波路内部に10μm×10μm程度の断面積空洞を形成し、その空洞に液晶を閉じ込めるプロセスの確立を図った。光学評価の結果、ある限定された範囲内で、素子の偏波制御機能が有効に働くことを確認した。 (2) 微小光素子の石英系光回路への複合集積 液晶以外に必要となる微小光学素子(偏光分離素子、波長板、磁気光学素子)を平面光回路に集積するための技術の開発を行なった。具体的には上記3種類の素子を石英系光導波路中に設けた矩形溝に複合集積することで、集積型の光アイソレータを構成した。その結果、再現性良く各素子、溝を加工する技術を確立した。また測定の結果、光軸調整が一切不要である素子構成にも関わらず、挿入損失約3dB、アイソレーション約22dBという良好な特性値を得た。 (3) 液晶回転波長板による偏波制御システムの構築 液晶素子による偏波制御の可能性を実証するため、液晶回転波長板を作製し、それとフィードバック制御系を組み合わせることで偏波制御システムを構築した。本システムは光ファイバ通信システム中での偏波揺らぎを、実時間で安定化することを最終的な目標としている。実験の結果、本システムが900゚/秒程度の速度の揺らぎまで、安定化することが可能であることを確認した。
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