研究概要 |
本研究は、Bi_2Sr_2CaCU_2O_y単結晶に内在する自然超格子ジョセフソントンネル接合における磁束量子ソリトンの基本性質を明らかにするとともに、磁束量子ソリトン運動に基づく位相制御型磁束量子ソリトンデバイスの開発を目的としており、本年度は主に磁束量子ソリトンの基本性質を調べ以下の成果を得た。 (1) フォトリソグラフィ技術を用いた同単結晶のデバイス加工 自己フラックス法により成長した同単結晶をフォトリソグラフィ技術を用いて、大きさ(160,320)μm×40μm×(10-150)nmのメサを精度よく作製する技術を確立した。これにより再現性のある電流-電圧特性を得ることができるようになった。 (2) 同単結晶に内在する自然超格子ジョセフソントンネル接合の磁場依存性 (1)で得られた成果をもとに接合数が100までのメサを作製し、その臨界電流の磁場依存性から、接合の下部臨界磁場は接合数に強く依存することがわかった。この依存性は本研究により初めて観測されたものであり、メサ内の接合間に強い磁気的結合が存在することを示している。 (3) 自然超格子ジョセフソントンネル接合における磁束量子ソリトンの基本特性の解明 自然超格子ジョセフソントンネル接合に磁場を印加することにより、電流-電圧特性上に観測される磁束量子ソリトン運動に基づくボルテックスフローブランチの磁場依存性から、同接合における、磁束量子ソリトンの伝搬特性を評価した。これにより、磁束量子ソリトンは4.2Kにおいて約3×10^6m/sの高速度で同接合内を伝搬することがわかった。また、この伝搬速度はバイアス電流には依存するが、接合長、接合数にはあまり依存せずほぼ一定であることがわかった。 本研究で得られた成果は、Bi_2Sr_2CaCU_2O_y単結晶自身を用いた新規な磁束量子ソリトンデバイス応用への可能性を示すものであり、本分野の今後の進展が期待される。
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