研究概要 |
本研究では,ニューロンMOSトランジスタ(νMOSトランジスタ)を用いた新たな回路技術を確立することを目的とし,高性能,高機能な種々の回路を提案している.まず,νMOSトランジスタを用いることで,低電圧,低消費連力,広入力レンジの特徴を兼ね備えた4象限動作可能なアナログ乗算器を提案した.このアナログ乗算器は,3入力のνMOSトランジスタを4つ,および,抵抗を2本使用した簡単な回路構成となっている.νMOSトランジスタの入力ゲートの一つをしきい値電圧制御ゲートとして使用し,このゲートを正の高い電圧(電源電圧)へ接続することで,見かけ上,しきい値電圧を負の値(ディプリーション型MOSトランジスタ)に設定している.この回路技術を使用することで低電圧動作が可能となる.提案回路の注目すべき特徴は,電源電圧=1Vで動作し,その時,入力レンジ=1V_<p-p> を実現できる点である.また,消費電力は9.56μWと極めて小さいことも確認された.この研究成果は,現在,電子情報通信学会の英文論文誌に投稿中である.次に,νMOSトランジスタを用いた低電圧,広入力レンジ指数変換回路を提案した.提案した回路は,1つの2入力νMOSトランジスタと6個の通常のMOSトランジスタを用いて構成されている.提案回路では,上述の乗算器で用いた回路技術とは逆に,しきい値電圧制御ゲートに低い電圧(=0V)を与えることで,見かけ上,しきい値電圧を高い値に設定し,νMOSトランジスタの弱反転領域を拡大化している.弱反転領域の入力レンジは,通常,しきい値電圧によって制限を受けるが,この回路技術によって広くすることが可能となる.提案回路の性能は,電源電圧=3V,入力レンジ=2.5V,出力レンジ=70dB,消費電力=0.38mWであることが確認された.本研究の成果は,電気学会・電子回路研究会にて講演発表された.
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