平成10年度では、下述のようにInP基板上II-VI族半導体フルカラー光デバイスのp側クラッド層材料について検討し、これを基にレーザ構造の作製を行った。 1. 本研究ではレーザのp側クラッド材料として、p型ドーピング特性に優れInP基板に格子整合するZnSeTeに着目し、さらにMgSe/ZnSeTe超格子によるワイドギャップ化について検討した。実験では、InP基板上にMgSe/ZnSeTe超格子をラジカル窒素によるp型ドーピングをしながら分子線エピタキシー法により成長させた。得られた試料のフォトルミネッセンス(PL)発光特性では、超格子中のMgSe層厚比を0から0.76に変えることによりPL発光ピークが2.11から2.68eVに増加した。また、pキャリア濃度はMgSe層厚比の増加に伴ない単調に減少することが示されたが、MgSe層厚比が0.4以下では10^<17>cm^<-3>以上のキャリア濃度が得られた。 2. MgSe/ZnSeTe超格子をpクラッド層に用いたレーザ構造をInP基板上に作製し評価した。活性層にはZnCdSeを用い、n側クラッドは塩素ドープMgSe/ZnCdSe超格子とした。作製した素子に77Kにおいてパルス電流を注入したところ、中心波長577nmの黄色LED発光が得られた。 3. レーザの発光波長を短波長化した場合でも充分に高いヘテロ障壁を得る手法として、多重量子障壁(MQB)の導入について検討した。MQBは、上述のMgSe/ZnSeTe超格子pクラッド層中に各層厚が異なるMgSe/ZnSeTe超格子を挿入した構造とした。この構造において、伝導帯ではMQBがない場合の約4.4倍の障壁が得られることが計算により示された。さらに、このMQB構造を導入したレーザ構造を作製し評価した結果、室温において中心波長604nmの燈色LED発光が得られた。
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