これまでの研究により、従来のMgZnCdSeやMgZnSeTeでは広い禁制帯幅で且つ高p型ドーピングを得ることが困難であることが示された。そこで本年度では、この問題を解決する新たなデバイス材料としてBe系II-VI族半導体に着目し研究を行った。具体的な材料としてInP基板に格子整合するBeZnTeとBeZnCdSeについて調べ、以下の成果を得た。また、ZnCdSeの高品質化について検討した。 1.BeZnTeをInP基板上に分子線エピタキシー(MBE)法により成長させた。このときラジカル窒素源を用いてp型ドーピングを行った。得られた結晶の光吸収測定より禁制帯幅を見積もった結果、InPに格子整合するBe組成0.48において3.12eVの広い禁制帯幅が得られた。また、試料のホール効果測定からは10^<18>〜10^<19>cm^<-3>の高p型ドーピングが得られた。 2.上述のBeZnTeを用いて発光ダイオードをMBE法により作製した。活性層とn側クラッド層には従来から研究を行ってきたZnCdSeとMgSe/ZnCdSe超格子を用い、pクラッド層をBeZnTeとした。作製した素子に室温においてパルス電流を注入したところ中心波長605nmの橙色発光が得られた。 3.Be組成の異なるBeZnCdSeをInP基板上にMBE法により成長させた。得られた試料を15Kでのフォトルミネッセンス(PL)測定により評価したところ、Be組成が0.003〜0.21の試料において橙色(597nm)から緑色(522nm)の良好な発光特性が得られた。 4.InP基板上ZnCdSeのMBE成長において、InPバッファー及びZnCdSe低温成長バッファーを導入することにより欠陥密度の低減に成功した。 以上の成果よりフルカラー光情報処理素子を作製するための基礎的な条件が確立された。
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