研究概要 |
単電子素子に用いる絶縁性障壁は電子のトンネル現象が観測できるほどに薄くする必要があり、その厚さは100Å以下になることが容易に予測される。この様な厚さにおいて、電気的及び化学的に安定な絶縁性の障壁の作製を目指すべく、SiO_2,Si_3N_4の絶縁物系から成るシリコン酸窒化膜を用いて非対称トンネル障壁を作成することを試みた。 シリコン酸窒化膜を用いた非対称トンネル障壁の作成は、従来も我々のグループにおいてシリコン酸化膜の熱窒化により行ってきたが、プロセスが1200℃で高温であるという欠点があった。今回の方法では、光励起によりシリコン酸化膜が窒化できることを初めて見出した。 プロセスとしては、2-3nmの極薄熱酸化をつけたSi基板をNH_3,Torr雰囲気で波長254,185nmの低圧水銀ランプを上部から照射することにより窒化を行った。AES(オージェ電子分光法)及びXPS(光電子分光法)による深さプロファイル測定の結果、熱窒化の時と同様、酸化膜表面および酸化膜/シリコン界面に窒素の分布が見られた。これは、光励起によりNH_3から分解したN-H基が、一部は酸化膜表面を窒化すると共に、他の一部は酸化膜中を拡散し、酸化膜/シリコン界面にパイルアップし、同界面を窒化したものとも追われる。 この光窒化法は、大面積で且つ極めて低温なプロセスであるため、実用性、生産性が非常に高い有効な方法である。 このシリコン酸窒化膜について簡単な電流-電圧測定も行い、非対称性の評価もおこなった。 以上の結果は応用物理学会において発表し、現在もプロセスの最適化を続行中である。
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