研究概要 |
素子の微細化に伴い電気伝導に関与する電子数が減少し、平均化されない個々の電子によるさまざまな振る舞い、いわゆる単一電子による現象が電気伝導に捕らえられるようになる。このような平均化されない個々の現象は、微細化することによってより顕著になり信頼性上ますます問題となるが、一方で平均化された量の伝導特性では捕らえられない微視的な情報を得ることができる。さらには、これらの現象を逆手にとった、単一電子を制御することによる究極的なデバイスの提案へとつながる。 上記現象の一つとして、微細MOSFETにおいては、チャネル近傍のトラップへの単一電子の捕獲放出によるランダムテレグラフシグナル(RTS)と呼ばれるノイズがチャネル電流にとらえられるようになる。このRTSは、2値の値を取るパターン以外に、3値4値と複雑なパターンを描く場合が有る。実験によって4値のRTSの捕獲放出時間を詳しく調べ、トラップされる電子のチャージングエネルギーという観点から考察し、トラップに関わるチャージングエネルギーを求めた。その結果、チャージングエネルギーは数百meVに達し、近傍のトラップのエネルギー準位をも変化させることがわかった。したがって、トラップに捕獲された電子間の相互作用が、複雑なパターンのRTSの起源となることを明らかにした。 さらに上記現象を、近年盛んに研究されている単一電子効果を制御する多重フローティングドットメモリー構造における電子の捕獲ということと対比させて考えてみると、ドットが高密度になるとドット間の電子の相互作用によって電子の書き込みが変化することを意味している。一方、単一フローティングドットメモリーは、微小なフローティングドットの加工におけるプロセスのわずかな揺らぎが特性に大きな影響をもたらすことが予想される。したがって、将来へ向けたフローティングドットタイプのメモリーにおいては、上記のトレードオフによってドットの配置、個数が決められるべきであるという事を指摘した。 さらに、将来、デバイスサイズがより小さくなるにつれて、メモリーの高速動作においては、トラップされた電子と、ドットへ書き込まれた電子とを区別することが難しくなる、という問題が生ずることをRTSの実験結果を元に指摘した,
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