研究概要 |
非線形かつ多峰性の目的関数を最適化する新しい手法として,決定論的カオスによる大域的最適化のアルゴリズムが開発されている。単純なアルゴリズムで記述されるカオスによる最適化手法は,少ない計算量で優れた大域的最適性を実現する。ただし,汎用のアルゴリズムとして実用化するためには,様々の非線形最適化問題を効率良く解くカオスの漸近測度の一般的設計手法の確立が不可欠となる。このようなカオスの自動設計問題に関して,今年度は,以下のような研究成果を得た。 1. 最適化問題を解くカオスの漸近測度を最適に設計する手法として,自動学習則を新しく導入した。学習則によって最適化効率の高い漸近測度を有するカオス的力学系の自動設計が可能であることを計算機実験を通して,一・二次元の問題について確認した。これはカオスによる大域的最適化手法が汎用のアルゴリズムとして広く実用化できる可能性を示唆しており,大きな研究成果と考えられる。なお,計算機実験に際して,補助金により購入した電子回路プロセッサを活用した。 2. 1で導入した学習則は,カオスの探索領域を徐々に局在化し,カオス的探索のダイナミクスを最適解に漸近収束させる「アニーリング」の機能を持つことを確認した。これは,今年度得られた新しい知見であり,今後,カオス的アニーリングの有力な手法として学習則をさらに検討してゆく予定である。
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