本研究の目的は、M進スペクトル拡散(M進SS)方式の車々間通信ネットワークへの適用可能性を探るとともに高度道路交通システム特有の自律分散型のネットワークプロトコルについて検討することである。本研究は、M進SS方式を発展させた拡散符号を拘束したSS(SS-CSC)方式を用いた車々間通信方式について性能を明らかにする。本研究は「基本性能検討段階」と「ネットワーク検討段階」の2段階、各々5検討段階で構成されている。本年度は「基本性能検討段階」であり、(1)調査検討段階、(2)スループット性能検討段階、(3)フェージング環境での性能検討段階、(4)測距性能検討段階、(5)総合検討段階について検討を行った。その結果、以下のことが明らかになった。 ・従来のM進SS方式のフェージング対策について調査した。フェージング対策はマルチキャリア方式とレイク受信方式が有力な手段であることが分かった。 ・M進SS方式のフェージング環境での性能を理論解析により明らかにした。M進SS方式のフェージング対策としてはマルチキャリア方式が有効であることが分かった。また、マルチキャリア方式を用いたM進SS方式は、狭帯域干渉波の影響も軽減できることを明らかにした。 ・M進SS方式やSS-CSC方式は、同時接続ユーザ数が少ない場合に高スループット特性が達成できるため、オファードロードが低い時に従来の直接拡散方式よりも有効であることが分かった。 ・SS-CSC方式において、縦列接続する拡散符号にM系列を利用し、M系列のCycle-and-Add特性を活かした方式を考案した。その方式は容易にフレーム同期を確立できる。同一フレーム長の直接拡散方式と比較して弁別指数が約半分であるため、測距性能は約2[dB]劣化してしまう。 今後の課題として、車々間通信環境における最適なネットワークプロトコルの検討などがあげられる。
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